第12章 3/4 リスボン
朝食は、近所のパン屋で買ってくる。

この辺りは下町っぽい感じがして商店も色々と揃っているし、メトロの駅も近い。

リベルダーデ大通りは海へ向けて真直ぐに下っている。
海辺の手前の繁華街の中心、バイシャ・シアード駅までは2駅しかないので海辺まで散策がてら歩いて行くことにする。



やはり歴史的建造物多数で見どころは多い。
道はセビージャより分かりやすい気がする。
途中、エレベーター付き展望台があったので昇ってみる。もちろん有料だ。


東に見える小高い丘に城塞のようなものがある。

何だかとても見晴らしが良さそうだし面白そうな建物だ。
地図でチェックすると、サンジョルジュ城ということだ。
あそこへ行ってみたい。
このエレベーターは昇っていった先の丘の上とつながっていて、丘側から入ればただということが分かりちょっと拍子抜け。
とてもレトロな市電の線路を横切って海辺のコメルシオ広場へ。
市電の集積地区らしくて、何台かの車輌が待機しているが、新しい2両編成の車輌もあれば、とてもレトロな車両もあって車輌好きには嬉しい光景だ。





今晩ファドを聴きに行こうと見当をつけてあったアルファマ地区まで歩いてみる。
海辺の道を東へ歩いて行けば北にある筈なので分かりやすい。
ファド博物館なる施設もある。ここでもショーがあるようだ。
真直ぐに行くとサンタアポローニャ駅に着く。
ここで線路が終わっている終着駅のようだ。
明日はここから列車乗ってポルトに向かう予定だ。
ポルト行きの列車の時刻をチェックする。
アルファマ地区は細い路地が行きかう、いかにも下町といった風情の街だ。
ファドハウスがあちらこちらにある。
ファドハウスが集まっている地区のようだ。
この地区は坂と石畳の細道と迷路。
シェフシャウエンの街を思い出した。
好きな雰囲気だ。

目当ての店、パレイリーニャ・ド・アルファマの位置を確認する。
20時開店で、ショーは21時からとなっている。
店も確認できたので一旦戻って昼食にしようと、また歩き始める。
先程見たサンジョルジュ城はこの地区の坂の上にある筈なので、そっちも確認しようと坂を上っててみたがうまく行き着けなかった。
リスボンは、ポルトから戻ってもう一泊する予定なので、その時の楽しみに残しておくことにした。
散策しながらゆっくりと歩いて戻ると昼時だ。
昨日宿を探す時にお世話になった親父さんのいる定食屋へ行ってみる。
頑固親父を絵に書いたような怖い顔をしたおじさんだ。
Plato do diaの魚料理があったのでそれを頼んで見た。
これはアジの塩焼きだな。ご飯が食べたくなる。
日本人の常として頭と骨だけを残してきれいに食べたら感心された。

ホテルへ戻って小休止、次の行き先を決める。
コメルシオ広場から海沿いを西へ行ったところにあるベレン地区にあるジェロニモ修道院へ行ってみよう。
その後は、一度は乗ってみたい28番の市電に乗ってどこか適当なところまで行く。
後は時間と場所によってその時考えるという感じだ。
天気が微妙だ。
洗濯物は取り込んで、傘を持って出かける。
先程地下鉄、市電、バス24時間乗り放題というお得なチケットを買ったので面倒がない。
コメルシオ広場から15番の2両編成の新型の市電で約20分。
巨大な建築物のジェロニモ修道院に到着。
観光名所なのだろう、遠足と思われる多分中学生か、多数いて大騒ぎをしている。
どこも変わらないものだ。
ここは歴史的建造物と他に、発掘物等の博物館が建物内に在る。
遠足の連中があまりにうるさいので建築物の見学は外側だけにした。
それでもその壮大なスケールには圧倒された。



15番の市電で一旦コメルシオ広場に戻り28番の市電に乗ってみる。
28番はアルファマ地区等の趣のある旧市街を縫うように走る路線として、観光客に人気の高い路線らしい。

確かに15番とは異なって古い車輌。内壁も床も木造だ。
こんなところも走るのかと驚くような狭い路地を走る。
車輌1台走るのがギリギリの道幅だから、違法駐車はあり得ない筈だ。
古い車輌だけあって結構揺れる。
しかし、料金は共通カードでOKだし、ワンマン運転、乗降システムは現代的なものになっている。



終点まで乗って一旦乗客は降りて折り返しの電車を待つ。
外は冷たい雨が降ってきた。風も吹いてくる。
停留所には雨よけなどはない。
待機している車両に早めに乗せてあげればいいのになどと思ったりする。
車内は結構込み合っている。
車輌の外の取っ手につかまって乗車というか移動している男がいるのだが、当然無賃乗車だ、運転手は見てみぬふり。こんなのもありなのか。
結構いい時間になってきたので、バイシャ・シアードのあたりで下車してメトロでアベニーダ駅まで戻ってくる。
バイシャ・シアード周辺


バイシャ・シアードメトロ駅へ降りるとても長いエスカレーター

宿へ帰る前に水とワインを買おうと思って財布を出そうとしたら、ショルダーバックのチャックが空いていて財布だけがなくなっていた。
やられた。
財布自体は現金しか入っておらず、しかも大した金額ではなかったので被害は少なかったのだが、バッグも目に付く位置に携帯しているにも拘らず全く覚えがないというところに驚いた。
プロフェッショナルの技だ。
以前ハノイでやられたことがあったが、あの時はリュックを背にしていてしかも鍵もかかっていないという油断した状況だった。
モロッコでかなり警戒していて、ヨーロッパに入って気が緩んだということもあるのだろう、ここは再度気を引き締めてかからなければいけない。
ショルダーバッグのチャックが体の後ろ側にあるのがいけないので、体の前の眼に着く位置に持って来れば良いわけだ。
更に一回チャックを開けただけでは取れない位置に貴重品を置くべきだろうと考えた。
気を取り直して、水と水のように安いワインを買ってアパートで休息。
今夜は、午前中に訪ねたアルファマ地区のパレイリーニャ・ド・アルファマで夕食をとりながらファドを楽しむという少しの贅沢をしようと思っている。
人気のファドハウスはすぐに満員になると聞いているし、予約はしていないので開店直後の20時過ぎには着くように出発した。
今回は歩かずにサンタアポローニャ駅までメトロで行ってすぐがアルファマ地区だ。


アルファマ地区は、夜になって昼間とは異なるロマンチックな佇まいを見せている。
席は確保できたが、徐々に埋まってくる。
21時のショー開始前に食事を終えてしまった。
これがかなりの量でかつ美味しかった。

バンドはギターとポルトガルギター、女性、男性歌手の編成。
客席が取り囲む同じフロアーで演奏する。
1回のステージは約20分と短いが15分位のインターバルを置いて何ステージもやるようだ。
ステージがはねるのは深夜の1時頃だと聞いている。
演奏が始まると明かりが消えて真っ暗。
これはよくある風景だが、演奏者にも光が当たらず真っ暗。
これでは演奏者が見えない。
本当に真っ暗。

ファドでイメージしていたのは、ゆっくりしたテンポでマイナーで悲し気なメロディ。
しかしそうでもなかった。
とてものんびりした明るいメロディも沢山あり、フォークソングのようにも聴こえた。
セビージャで聴いたモダンなコードの響きというものはあまりなく、聴きとることができるくらいの素朴なコードの流れが多かったように思う。
これは伝統的なスタイルなのだろうか、パレイリーニャ・ド・アルファマという店がこのスタイルのファドハウスということなのかもしれない。
他の場所ではモダンなファドが聴けるのかもしれない。
ポルトガルギターはバンドリンと形も役割も似ている(おそらくこちらがルーツなのだろう。)。
ショーロのスタイルの原型はこの辺りにあるのだろうか。
全てが生音だがとても良く響く。
石造りの建物というのも音が良く響くものだ。
歌手の声量は相当なものだった。
セルベージャだけではもたないので、ワインのハーフボトルを頼む。

段々眠気も襲ってくる。
地下鉄の終電は何時だったかと、日本と同じようなことを考えてしまう。
歌手が入れ替わって何ステージも進んでいる。
結局0時近くまでいてまだ十分にあるメトロで帰ることができた。
食事も付いたのでそれなりの値段はしたがとても楽しかった。
雰囲気もサービスもファドも満足のいくものだった。
財布は失敗だったが、これから気をつければよいことだ。
これもインシャラーと考えよう。

