大日影隧道
中秋の暑くもなく寒くもなく良い季節。
とても天気が良くて空気も乾燥してさわやかだったので、かねてから興味のあった大日影隧道へ行ってみることにしました。
ここは、廃線になった1.4kmの鉄道トンネルを、線路や標識等の当時の施設はそのままにして遊歩道となっているという珍しい施設です。
つまり、鉄道トンネルを1.4km、通年歩くことができ、しかも入場無料という、プチ鉄にとってはとても楽しい場所なのです。
線路上を歩くというのは何故かとてもわくわくするものがあり、最近では屋久島縄文杉への道程とか、古くはSLの写真を撮りに米坂線の線路を歩いた(本当はいけないのだろうが)ことを思い出します。
場所は、中央本線勝沼ぶどう郷駅徒歩すぐ。
1903年(明治36年)に開通し、1997年(平成9年)に新トンネルが開通したために廃線になり、その後旧勝沼町(現在は甲州市)に譲渡され、2007年(平成19年)に遊歩道として整備されたと案内板にあります。
自宅を10時頃出発して、京成線、都営新宿線、京王線、中央本線と乗り換える激安ルートで13時過ぎには勝沼ぶどう郷駅着。
勝沼はブドウ作りで有名な扇状地で、駅は扇状地の上部の方にあって(つまり市街地にはない。)、見晴らしはとても良いのだけれど駅前は住宅と葡萄畑で商店はほとんどありません。
1軒だけあった食堂で遅い昼食。
駅から東へ歩いて行くと公園があって、懐かしやEF64がとてもきれいな状態で展示保存されています。
旧ホーム跡
しばし見とれて、左手階段を昇ると大日影隧道入り口です。
中秋とは言え、日差しが強いので温度が上がってきていますが、トンネルに入るとひんやりしてきます。
一枚羽織らないと寒い。
この辺りから線路中央に開渠水路が設置されている。とても珍しいらしい。
トンネルは煉瓦作りで、蒸気機関車や気動車が走行した期間が長かった名残りのすすやばい煙がこびりついて良い感じです。
そのような様子は照明があるので分るのですが、これが実に絶妙な感じのライティングで、この世のものとは思えない幻想的な空間を生み出しています。
所々にある待避所に置かれているオブジェもそんな雰囲気を後押ししているように思えます。
オブジェと休憩所
歴史説明のパネル
標識
保線用の車両
施設自体きれいに保存されていて掃除等も行き渡っているようで、とても快適。
直線なので1.4km先の出口がポツンと小さく見えていて、進むにつれてそれがだんだん大きくなってきます。
東京駅からのキロポストがそのまま保存されています。
片道のんびりと30分ほどかけながら見学。
これは直線だから往復2.8kmで何往復かジョギングしたら、夏でも涼しいからいいだろうなとは一瞬思ったけれど、全く日の当たらないところを走るというのもちょっと悲しいかなと。
出口に至ると、更に先に深沢トンネルというものがあります。
こちらは入り口をふさいであって、隣接する休憩所兼管理事務所に申し出ると中を見せてくれます。
中は、低温を利用したワインカーブになっていて、個人所有のワインも多数保存されていました。
帰りも再び隧道を戻ります。
16時閉門。
今回は隧道が目的だったので、ワイナリー見学はしないで帰ります。
例えば、昼過ぎまでに隧道見学を終えて、後は夜までワイナリー見学と試飲をくり返し、そのまま市内で飲みに入ってしまうというのも素敵なコースかもしれないなあと思いました。
帰りは、大月駅から中央特快東京行。
都内で夜遅く大月行の中央特快を見かけることはあるけれど、この区間で乗るのは初めて。
とりわけ、高尾以西の中央本線ローカル車両では通常の、乗客が自身でボタンでドアを開閉する方式をあの中央特快車両で経験するのは初めてでした。
普通、都内で中央線に乗っていてもあのボタンを利用することはないわけで、通常はトマソン的(赤瀬川源平氏の表現ですが)オブジェとしか意識していないボタンが、ある瞬間から意味のある道具として利用されるというのは新鮮な驚きです。
というわけで、夕食時間帯までには帰宅できる非日常空間を味わった小旅行でした。