第7章 2/28 リッサニからシェフシャウエン
夜明け前に目が覚める。
まだ暗いが、同行してくれた青年が布を敷いてお祈りを始めた。
朝一番のアラーに対するお祈りの時間なのだ。
後で聞いたら、一日に5回だと言う。
ホテルパノラマから見た朝のリッサニの街


今日は良い天気だ。
モロッコの朝食によく出てくるパンケーキとお茶の朝食を済ませて、ホテル代70dh(約840円)を支払ってバス停へ。
乗客は昨日の騒ぎで顔見知りになっていたので笑顔で挨拶。
そしてバスは何事もなかったかのように8時に出発した。
昨日停まってしまった街は、エルラシディアという街だった。
エルフード、エルラシディアで昨日と同じメンツが揃う。
しかし、8時出発で8時間はかかる筈だから、フェズ発16時台のシェフシャウエン行きのバスに間に合うか不安だ。
だが、アトラス山脈に近づくにつれて大絶景が広がってきて、そんなことは忘れてしまった。
本来は夜行バスだから見れなかった景色である。
土漠の風景から雪が残る山道へ入って行く。
車が立ち往生したりしている。
なるほど、この状態では夜の走行は危険と判断したCTM(モロッコ国鉄バス)の判断は正しかったと納得。
無理だよ。この曲がりくねった山道に雪。命にかかわる。






height="480" />





バスは、Supra toursと比べるとおとなしい運転だ。
車窓の変化は今まで見たことのない景色が続く。
雪山とテーブルマウンテン、時々現れる河、ものすごい風、雪景色、そして砂嵐。
言葉も出ないような景色の連続。
思えば、これらが見れたのだから昨日欠航でも良かったのかなと。
インシャラーだ。











しかし、行けども行けどもフェズに近づかない。
8時に出発して12時頃に10分のトイレ休憩をとったきりで走り続けている。
休憩のドライブインは冷たい強風が吹きすさんでいた。

そして、砂嵐が近づいてくる。


この辺りバスの前方は砂で視界が悪い。







右手に見えてくる山はロールケーキに似ている。



アトラス山脈を越えて高速道路に乗った。

もう夕方、今朝7時頃食べたきりの細々とした朝食で、お腹がすいてきた。
しかし、砂漠の頃から食事の間隔が長いということにだんだん慣れてきているのかもしれない。
10時間くらい食べなくても我慢できるようだ。
ただ、トイレは絶対ダメ。
もうこの時点で16時を過ぎている。
シェフシャウエン行きのバスはあきらめざるを得なくなった。
17時頃、高速を降りるのかなと思ったらドライブインに入って、これは昼食なのか夕食なのか、とにかく大休止。
皆、食事を始めた。
今までの経験から、食べれるとき食べておかないと次はどうなるか分らないので、とにかくよく分らない物を注文するが、これが待てど暮らせど来ない。
運転手たちは早々と食事を済ませて談笑している。
数分で食事を済ませるが会計が混沌。
一人の係員に客が群がっている。
支払おうとするだけマシかと思うが、はやバスが出るぞーとのクラクションを鳴らし始めた。
出発したのは18時頃。
シェフシャウエン行きのバスには間に合わなくても、まだ明るいうちに着けばグランタクシー等の手段を探せるんじゃあないかなと思っていたらどんどん暗くなってくる。
行けども行けどもフェズに着かない。アフリカは広いな。
おそらく、荒天の影響で通常とは別のルートを走っているのだろう。
時間がかかっている。
こうなったら焦っても無駄だ。
要するにインシャラーということなんだ。
高速の周囲の景色も、普通であれば人造と思えてしまうのが、自然の造形であるところがすごい。
結局、フェズ到着は20時頃。
実に12時間かかった。もう真っ暗。
バスはもう望むべくもないので、グランタクシーに乗るために、まずはATM。
あちこちにあるのだが、これがまた出ないのだ。
やっと500dhをゲットしてグランタクシーと交渉。
もうこの時間だとシェフシャウエンへのグランタクシーはない。
タクシーだと1000かかるということだ。
800までまけろと交渉するが、時間もかかるし900までとのこと。
23時頃出るバスで行くという手もあるが、朝の3時に着いたところでホテルには入れないだろう。
知らない街で路頭に迷うことになる。
二日連続で路頭に迷う不安はちょっときつい。
フェズにとどまってホテルを探して明日のバスを待つという次の手は、ホテルを探さなければいけないということと、明後日の移動が多分ハードなのでシェフシャウエンを充分楽しむことができないというデメリットがある。
結局10000円近くかかってしまうが、タクシーで移動した方が良いと判断した。
ただ、900を払ってしまうと手持ち現金が0に近くなってしまうのでシェフシャウエンに着いてからがマズい。
で、タクシーに乗り込んでからは、まず出るATM探し。
これが苦労した。
無愛想なドライバーだが協力してくれてようやく問題解決。
このまま向かうのかと思ったら、GSへ。
ガソリン代を出してくれと言う。
そんなことは聞いてないが、ガソリン代をマイナスした料金しか請求しないからということで納得。
どのくらい時間がかかるのかと聞くと、4時間と言う。
そうすると到着時間は夜中の0時をまわってしまう。
ホテルに連絡しておかないとマズいとドライバーに相談し、電話番号を告げた。
電話をかけてくれたのはいいが、何やら厳しいやり取りをしている。
ここまで英語は通じない。超カタコトのフランス語でのやり取り。
次に停車したのが今度はどうやらポリスステーションらしきところ。
パスポートを出せと言う。
何なんだ。
不安いっぱいのこちらに、ポリスは英語可なのでニコニコしながら「Do you like Morocco ?」などと聞いてくる。
何やら書類を作っているが何なんだろう。
書類ができたら解放してくれたので、おそらくバス移動の時にも何回かあった検問を通る書類ではないかと推測した。
難民問題も関係あるのだろうか。
ようやくシェフシャウエンに向かって走り出した。
どんどん山道に入って行く。確かに遠い。
眠くなる。ドライバーも大あくびの連発。
「Ca va?」 と聞いてやる。
雨が降り出してきた。
ライトの加減で雪融け道を走っているような錯覚を覚える、そして対向車が真直ぐこちらに突っ込んでくるような錯覚も。
スリップしそうなのに厳しいカーブに猛スピードで突っ込んでいく感じがして、手に汗を握ってしまうのだ。
4時間近くかかって、ようやくシェフシャウエン到着。
しかし、ここからが分らない。
グーグルで見ると宿から遠ざかっていくような気もするし、外は冷たい雨のようだし。
また何やら携帯でやりとりして、ようやく到着した広場にはホテルオーナーのエリアス氏が傘をさして待っていた。
ドライバーがエリアス氏と連絡を取ってくれて呼んでくれていたのだ。
しかも、ホテルの前まで行けなかったからと言って100戻してくれたので、当初のこちらの希望金額になった。
翌日になって分ったのだが、ホテルの前は車は通行不可能なところ、行けないというのは当たり前だったから100返してくれる必要はなかった筈なのだ。
4時間近くも夜の山道を運転してもらったうえに、こんなふうに気を使ってもらって、何だか少しでも疑ったりして申し訳なく思った。
暗くて良く分からないが確かに青い街だ。そのうえ迷路。雨も降っている。
オーナーと連絡を取ってくれなかったら到底ホテルには行き着くことができなかっただろうし、行き着いたとしても中に入れなかっただろう。
冷たい雨の中、見当もつかない街の屋外で夜を明かすのは危険すぎる。
モロッコの人々の親切に感謝。
結果としてはこの選択肢で良かったのだ。
部屋はわりと広くて何となく青い。快適そうな部屋だ。
ホットシャワーもある。


17時頃ドライブインで食事をとったきりなので空腹ではあるが、街は寝静まり、飲食店はもう閉まっている。
空いていた近くの商店でビスケットのようなお菓子と水を調達して飢えをしのぐ。
肌寒いが、安心感が心を満たす。
もはや、酒のことは忘れてしまった。
明日はゆっくり街を見てみよう。

