皆様、今晩は。
便利な世の中になったものです。
昭和30年生まれにとっては、21世紀というものは、車は空を飛び、ロボットが人間並みになり宇宙旅行は当たり前、タイムマシーンで時間航行もという世界が漫画や小説のそれでしたが、高度情報化という形になるということはあまり想像されていなかったように思えます。
その結果、以前では考えられない映像がすぐに見られるということ、つまりU-TUBEを始め、さまざまな映像メディアの発達は有効に活用すればまさにタイムマシーンを手に入れたと同様ですね。
U-TUBEを使って最近最もうれしかったのは、Derek Bailey氏の映像を見られたことです。
Derek Bailey氏は1932年生、イギリス人ギタリスト、2005年に亡くなっています。
いわゆるフリージャズのギタリストそれも唯一無二の存在でした。
小生は70年代初めに来日した際、田中眠氏(舞踏家)との競演を見たことがあります。
レコードも持っていますが(デイブ・ホランド(b)とのデュオ)、30年程経った今もあの姿が忘れられませんでした。
それがこんなに簡単に見られるなんて・・・・・・・!
晩年のこの映像に記録されたソロギターは今まで聞いたソロギターの中で最も素晴らしいかもと思えました。
→http://www.youtube.com/watch?v=4P5raW49kQM&feature=related
田中眠氏とのコラボレーション
→http://www.youtube.com/watch?v=A5dz_1meBjY&feature=related
で、手に入れたのが高柳昌行氏のリメイクCDです。
何故こうなるかというと、高柳昌行氏は日本モダンジャズ界の黎明期(戦後まもなくの頃でしょう)のギタリスト第一人者で、渡辺香津美氏の師匠にもあたります。他にも氏の教えを請うたギタリストは数知れず。
モダンジャズから次第にジャズジャズしいジャズを捨てて70年代からは日本で最も先鋭的なフリージャズを創造していきました。
その氏が評価する数少ないギタリストの一人がDerek Bailey氏だったのです(Jim Hallもそうでしたが、Wes Montgomeryはぼろくそだったと思います。)。
小生はお金の無い高校生時代、往復葉書さえ出せば無料で聴きに行ける高柳昌行氏のライブを毎月青山タワーホールへ聴きに行っていました。71、2年の頃でしょうね。
New Direction For The Artというユニットでした。
高柳昌行(g)、森剣次(as,ts,ss etc)、山崎弘(ds)、ジョー水木(ds)という構成だったと思います。
内容は大フリージャズ。
1曲が大体1時間近かったと記憶しています。
曲名は、集団投射とか漸次投射とかフリーフォーム組曲とか。
高柳氏は客席に終始背を向けたまま、ギターのフィードバック奏法を駆使している。しかも弓やバターナイフを使って。
森剣次はスタンドに立てた10本ほどの管楽器をあちらこちらに移動しながら吹きまくり。
dsの二人も叩きまくり。
嵐のような2時間ほどだったと記憶しています。
自分がトランス状態になったこともあったし、聞いた帰りに吐き気を催したこともありました(実際に吐いたこともありました。)。
当時のフリージャズは吐き気を催すほどに真剣に自己対峙する姿勢を要求していたように思います。
レコードも持っていた記憶があるのですが、いつの間にかどこかへ行ってしまったようで。
フリージャズも時々聴きたい気分の今になって、Derek Bailey氏の演奏をきっかけに当時の状況、自分的にはフリージャズをきっかけに現代詩や現代文学等を好きになっていった感覚が思い出されてきて。
状況的には、ベトナム戦争や学生運動、三里塚闘争の時代です。
ジャズも状況的な意味付けを余儀なくされていた部分もあったと思います。
で件のCDです。
1枚は、1971年、三里塚闘争の一環として現地で行なわれた「幻野祭」におけるNew Direction For The Artのライブ録音。
収録は1曲、42分。曲名は「La Grima」(スペイン語で「涙」ですね。)。
ジャケットです。
中開きです。当時の三里塚の様子が分かります。
当時の運動家の感覚から言えば、フリージャズなどというものは、インテリの、すなわちブルジョアジーの音楽と把えられていたのでしょうか。
MCで「「La Grima」「涙」を演奏します。1時間くらいの演奏になると思います」と高柳氏のアナウンス後、「えーーっ」「涙だってよー」「ギャハハ」「がんばれよーー」等々嘲笑の風が吹いていきます。それらを無視して演奏が始まります。「☆☆☆☆・・・・!!!・・・★★★★☆☆☆☆・・・・!!!・・・★★★★・・・・」全員ノックダウン。
41分。
演奏後はまばらな拍手と「やったー」との声の後に「帰れ、帰れ、帰れ」の大シュプレヒコールです。
今聴くと音楽の力に感無量です。
そんな高柳氏も91年享年58歳で亡くなりました。
82年の新宿「ピット・イン」でのソロライブ録音「Lonely Woman」(フリージャズの巨匠、オーネット・コールマンの名曲です。)も手に入れました。
これもLPの時代から欲しかったんです。
晩年は、タンゴに凝りまくっていて、新宿「ピット・イン」で弟子20名位でギターのみのタンゴコンサートを開催したこともありました(全員で一斉に弾きます。)。
今回は、ジャズ・ギターに関するこだわりのお話でした。
退屈だったらすみません。
ではでは